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「夢路に帰りて」は夢で見た時には全体的にミステリー調だったこともあり、割とシリアスに書きましたが、完全に不安定にする気がなかったのであのような書き方になりました。が、「現実か夢か」をあやふやにさせるのが目的だったらこういう終わり方だった…というものを書いてみましたので、続きに入れておきます。

昨日も拍手ありがとうございました。コメントを下さったぷえたろう様、済みませんが後日メールにてお返事も併記させて頂きますので、少々お待ち下さい!
それと、アンケートが本日までとなりました。二週間を設定させて頂きましたが、一週間ぐらいでも良かったなあと思ったりしました。色々と勉強になりました。ご協力下さった方、これから投票して下さる方、本当にありがとうございます。


※唐突に途中から始まっています。ラスト、たゆらがサスケを訪ねてきたあたりからです。
——————————




「夢を…見た」
「え?」
「あなたの夢だ」
 たゆらが幽かに笑みを口端に乗せる。能面のようなそれは、幼い頃の病を物語るのだと分かっても、どこか幽玄で現実味が薄かった。
「うちはサスケ」
 ああ、前にも、そんな呼ばれ方をした。
 いつ?
 どこで?
「己は…己たちは、あなたを待っていた」
「…たゆら…?」
 もうずっと夢の中にいるようだ、とサスケは思った。
 自分の夢ではないのかも知れない。
 誰か———例えばたゆらの夢の中にしか、自分は存在しないのかも知れない。現実感を取り戻したくて、サスケはグラスを掴む。カラリ、氷が泳ぐ。この氷はいつ融けるのだろう? 指先が冷やされてゆく。その掌が、再びじんじんと熱を持ち始めた。ナルトの頬を打った感触が蘇ってくる。この氷は果たして本当に融けるのだろうか? 指先が震える。ナルトの頬を叩いたのは何故だろう。蒸し暑い真夏の苛立ち? 窓から入る風は自然と不自然に涼やかに感じる。ぬるい風、だが『風』であるというだけで確かに涼しい。静かな田舎の、暑いが涼やかな風。喧噪はない。
(喧噪?)
 そうだ、引っ越す前は、深夜でもどこかで何かの音が聞こえていた。
 ここにはない。
(違う)
 ない。
 聞こえるべきものすらないではないか。グラスの中に変化は見られない。見つめていたところで、氷の大きさに変化など見つけられない。グラスを掴んだまま、喘ぐように窓を見た、外を見た。遠く林が風に揺らめいているのが見える。だが、聞こえない。こんな長閑な田舎、鳥の声ぐらい、聞こえても良さそうなものなのに。
 いや、そうじゃない。
 聞こえるべきもの。
(蝉…)
 ぞっとした。夏であればどんなに都会でも聞こえてくる、暑さを助長するあのうるさい鳴き声が———ない。昨日バスを降りた時はどうだ。なかった。いなかった。
 いたのは———たゆらだけだった。
 認識したとたんに蝉の声が大音響で響き出す。その合間を縫うように林の方で鳥が鳴く。嘘だ。嘘だろう。
(ここはどこだ)
 俺はどこにいるんだ。
 もうずっと、夢の中にいるようだ、と———。
 呆然と視線をたゆらに移す。
 たゆらは静かに微笑んでいるだけだ。
 ああ、たゆらも、笑うのだ。
 たとえば、たゆらの夢の中にしか。
 俺は『俺』なのか、たゆらの見る『俺』でしかないのか、それとも、俺自身の夢の中なのか。『俺』は嘘なのか、幻想なのか、それとも『たゆら』の方が幻想なのか。
「…死なねえよ、アイツは」
 たゆらは黙って見返した。
「待ってたんだろ、俺を。だったら…死なねえよ」
「はい」
 現実にしろ、サスケかたゆらの夢にしろ、そこではナルトは病の身なのだ。
 そして、彼らがサスケを待っていたのだと言うのなら。
 見つめる先で、氷はその大きさに変化はない。が、時折順序を入れ替えて音を立てるのは、確かに融けているからだ。ひまわりのような大輪の笑顔を思い浮かべる。それは夢などではない。かつて見たかどうかも問題ではない。この先いくらでも見られるようになるものなのだ。
 氷を見つめたまま、サスケはその笑顔に微笑み返した。

 
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